ZJACの採点を終えて・・・ 透析と浸透圧 [CVX-化学発展演習 日記]
こんにちは~ (*^_^*)/
久々の更新です。
某実戦講座の採点していて激しく気になったのが、「透析の原理と方法を2行程度で説明せよ」の記述に「浸透圧」を用いている答案が多かった!Σ( ̄ロ ̄lll)ことです。大丈夫か、東大受験生!!
透析も浸透圧も、共に半透膜を使用するため、混乱が生じているようです。ネットで検索しても人工透析が真っ先にヒットするので、ここで記述対策としてまとめておきましょう。
化学辞典/東京化学同人には
・透析(dialysis) = 半透膜を用い、コロイドや高分子物質の溶液から、塩類など低分子物質を分離すること
・浸透(osmosis)=膜などを通しての気体分子や溶媒の流れ,狭義には濃度差による媒体の移動を指す
とあり、ともに「粒子径の小さいものは通過させるが、粒子径の大きいものは通過させない」半透膜の存在がポイントになっていますね。
ここで、注意すべきなのは、浸透圧の問題で使用される半透膜の多くは、牛の膀胱膜(牛さんゴメンね)や魚の浮き袋等「孔(穴)が小さく溶媒分子(水分子)以外は透過できない」半透膜です。皆さんは、「イオンには水よりも半径が小さいものもあるじゃないか?それなのに、水だけ通れるのはなぜか?」と疑問を持たれるでしょうが、水に溶けたイオンなどの溶質粒子は必ず溶媒和(水溶液なら水和)しているため、イオンは単独では存在せず、「水和イオン=イオン+水和している水分子」の塊で水中を移動しています(その例が電気浸透です)。したがって、水和イオンの直径が孔(穴)より大きくなるため、イオン自身の半径が水分子より小さくても、イオンは」半透膜を通過できなくなるわけです。
さて、 透析で使用する半透膜には、セロハン紙,コロジオン膜,硫酸紙(全てセルロースが主体の膜ですね)といった目の粗い比較的孔(穴)の大きい半透膜である透析膜を使用します。
流水中に透析膜で出来た袋を漬けておくと、水分子は流れに沿って膜を通過し袋の中を通って移動します。袋の水中に存在する粒子は全て水と共に移動しようとしますが、「孔が大きい=小さい粒子は水と同様に通過できる」ため、溶質粒子(粒径が1nm未満のものでイオンや低級分子)だけが水の流れに乗って袋の外に出られます。「孔が大きい=大きな粒子だけが引っかかる」ということで、コロイド粒子(粒径1nm~1μm)は膜を透過できずに残り、コロイド粒子と溶質粒子を見事に分離できるというわけです。これが透析です。
高分子化合物は1分子がコロイドサイズの分子コロイドであり、水酸化鉄(Ⅲ)や硫化銅(Ⅱ)などの無機物は粒子コロイドであるので、どちらも透析によって精製できます。
なお、水と水溶液を透析膜で隔てた場合、最初は濃度差による浸透圧が生じますが、時間経過と共に溶質粒子は拡散によって膜を通過して全体に均一に拡がってしまう(エントロピー増大の法則)ためしまうため、最終的には二液間に濃度差が無くなって二液間の浸透圧も0(Pa)となります。
ところが、水とコロイドを含む水溶液を透析膜で隔てた場合は、最終的にはコロイドの濃度の分だけの浸透圧が両液間に生じます。コロイドは透析膜を通過して拡散することが出来ないからです。
したがって、透析と浸透圧はまったく無関係というわけではありませんが、透析の説明に浸透圧を使うのは誤りです。
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さて、梧桐は昨年9月より某医系予備校から流れてこられた太郎さんの受験指導をしていました。某校では「合格は無理」との烙印を押されての転塾でしたが、半年の個別指導の甲斐あって医学部に合格を果たしました
適切な個別指導があれば合格できることが実証できて嬉しいです O(≧∇≦)O
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