軌道の混成 [C3J-東大化学 日記]
こんにちは~ (*^_^*)/
さて、今回は、軌道を使った共有結合の話です。
共有結合は、不対電子と不対電子が結合して共有電子対をつくることで生じる結合です。このとき、共有電子対は、不対電子としてそれぞれ所属していた2つの軌道を結びつけて、そこを飛び回ります。したがって、分子の形は、軌道の形によって左右されます。
例えば、水素Hは、K殻の1s軌道に不対電子を1個持っていますが、s軌道は球形なので、どこから結合したって同じです。しかし、酸素OはL殻にある2つの直交する2p軌道に1個ずつ不対電子を持っているので、2個の水素H原子と結合して出来る水H2Oは折れ線形(くの字形)の構造になるのです(異説については後述)。
さて、L殻の2s軌道に2個の非共有電子対と2つの2p軌道に不対電子を1個ずつ炭素Cは、一酸化炭素COのような場合は2つの共有結合C=Oにより結合します。ところが、炭素Cが2個以上の原子と結合する場合には、2s軌道の電子の1個が2p軌道へ移って(昇位)、2s軌道と 3つの2p軌道に不対電子を4個持つ形になります。
共有結合のうち、単結合(一重結合)には、「結合に使う軌道は等価(同形・同大)でなければならない」というお約束があります。 そのため、形・エネルギー・大きさの異なる2s軌道と2p軌道から、新しく同形・同エネルギー・同大の混成軌道を同数だけ作るのです(軌道の混成)。以下は炭素の混成をまとめたものです。
メタンCH4のように、結合する相手の原子が4つの場合は、2s軌道と3つの2p軌道全てを混成させて、4つのsp3混成軌道をつくります。混成軌道には、以下の決まりがあります。
a.エネルギー準位の異なる電子軌道は、混成するとエネルギー準位が互いに等しい混成軌道を作る。
b.混成軌道は、互いに同形・同大(等価)である。
c.混成しても軌道の数は変わらない。
d.混成によってエネルギーを放出して安定化する。
e.電子対の入っている電子軌道は、原則として混成に参加しない。
f.混成軌道は、空間的に対称となるように伸びる。4
アンモニウムイオンNH4+のように配位結合する場合は、電子対が入っている軌道も混成に参加する
よって、炭素Cが4つの水素Hと結合するメタンは、結合角109.27°の正四面体構造となります。
また、エチレンのように相手の原子が3つの場合には、2s軌道と2つの2p軌道が混成して、正三角形構造になります。このときに、σ結合しないで残っている2p軌道同士が横向きにくっついたのが、不飽和結合であるπ結合です。
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