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第3の固体「準結晶」 [C2J-東大化学 日記]

こんにちは~ (*^_^*)/

入試化学では、固体の状態として、構成粒子が整然と規則正しく配列した結晶と無秩序な非晶質(アモルファス)の2つがある・・・・と教えますが、今年2011年にダニエル・シェヒトマン博士がノーベル化学賞の受賞理由は「第3の固体 準結晶」の発見と研究です。

この「準結晶」については、日系サイエンスの1996年7月号「準結晶はどこまで解明されたか(科学技術庁金属材料技術研究所第3研究グループ主任研究官蔡安邦(さい・あんぽう)博士)に詳細な記事が、蔡研究室のホームページには準結晶の単結晶写真が掲載されています。

--------------------(National Geographic News October 6, 2011)

nobel-chemistry-2011-winner-quasi-crystals_41433_big.jpg

 周期性はないが規則的に原子が並ぶ「準結晶」。その一種を表す原子モデルはモザイクタイルのように見える。このような構造を持つ結晶はあり得ないと考えられていた。

 10月5日、準結晶の発見者であるイスラエル工科大学ダニエル・シェヒトマン特別教授に2011年度のノーベル化学賞が贈られた。私たちの生活を変えるようなノーベル化学賞の発見のリストに準結晶も加わったことになる。

 アメリカ、ペンシルバニア州フィラデルフィアに本拠を置くNPO「ケミカルヘリテージ財団(Chemical Heritage Foundation)」の理事長兼CEOトーマス・トリットン氏は、「シェヒトマン氏が発見した当時、準結晶は物質の予想外の状態だった。当初は批判さ れたが、粘り強く研究を続けた結果、勝利を収めた」と話す。

 シェヒトマン氏は1982年4月、アルミニウムとマンガンの合金の結晶を電子顕微鏡で調べ、“禁断の対称性”とも言うべき準結晶の例を初めて目にした。 明るい10個の点が等間隔で並んだ、同心円状の独特の回折パターンを発見したのだ。当時、結晶にはそのようなパターンは現れないと考えられていた。

 同氏の最初の発見以降、自然界や実験室で多数の準結晶が発見された。弾力性の高いスチールの一種で発見された準結晶は、現在ではかみそりの刃や手術用の針に利用されている。

 準結晶のユニークな物理的性質は、ディーゼルエンジンからフライパンまでさまざまな製品に応用できる可能性がある。

 アメリカ化学会の次期会長バッサム・シャカシリ(Bassam Shakhashiri)氏は、「アルミ製のフライパンで料理すると、すぐ高温になり、加熱にもむらがある。準結晶でコーティングしたフライパンを使え ば、効果的に熱が分散される。金属の場合でも、準結晶は原子配列と結合パターンのおかげで熱や電気の伝導性が低いからだ。準結晶は偉大な知的発見であり、 社会に役立つ応用の可能性が今後広がるだろう」と語っている。

---------(以上引用終わり)-------------

しかし、既成概念を打ち壊す斬新な研究は、常に批判と迫害を受けるようです。

---------------------------(THE WALL STLEET JOURNAL 2011.10.07)

 準結晶は、規則的な数学的配列を形成しているが、決して同じ配列を繰り返すことのない固体の構造で、それまで考えられていた結晶の概念を打破する発見だった。

 シェヒトマン博士は1982年、米国立標準局(現在、米国立標準技術研究所=NIST)に在籍していた際、アルミニウムとマンガンの合金の構造を電子顕 微鏡で観察し、不思議な構造を発見、準結晶と名付けた。その回折像は10回の回転対称性を示しており、それまで知られていない構造だった。さらに奇妙なこ とに、このパターンは、観察する角度に応じて5倍の対称性へと変化しているようだった。これも当時、同じようにあり得ないとされた現象だった。

 他の科学者たちは当初、同博士の発見に極めて懐疑的で、結晶学に関する化学の教科書を同博士に手渡し、それを再読すべきだとまで酷評した。同博士が持論 に固執すると、研究グループから去るように命じられたという。実際、発見について叙述した同博士の研究論文は「応用物理学紀要」によって当初拒否され、2 年後に米物理学会の「フィジカル・レビュー・レターズ」にようやく掲載された。

 当初、シェヒトマン博士の研究結果を検証して確かめてみると申し入れた科学者はたった1人で、同博士が卒業したイスラエル工科大の同僚のイラン・ブレヒ 氏だった。最終的にはNISTの材料物理学者ジョン・カーン氏(今年、京都賞の先端技術部門賞を受賞)とフランスの結晶学者Denis Gratias氏も検証に加わった。 

  3人が共同で検証した結果、物質の結晶パターンに関するこれまでの常識とは反するシェヒトマン博士の準結晶発見を確認した。シェヒトマン博士の発見前 は、科学者たちは、あらゆる結晶を構成する原子は対称パターンを形成し、それが周期的に繰り返されると信じていた。科学者たちにとって、結晶形成にはこの 反復性がどうしても必要だったからだ。

 しかしシェヒトマン博士は、結晶でもなくアモルファス(非晶質)でもない第3の固体状態、つまり準結晶を発見した。 

 準結晶の特徴的な配列パターンは、13世紀の中世アラブやイランのモザイクのデザインに似た構造だ。スペインのアルハンブラ宮殿のモザイクにもみられる。 

 米化学学会のナンシー・ジャクソン会長は「シェヒトマン博士の発見は偉大で、発光ダイオードからディーゼルエンジンの改良までさまざまな応用が可能だ」 と指摘している。実際、準結晶は、こびりつかないフライパンや耐久性に優れた鉄鋼、電子回路など多岐にわたって利用されている。

-------------(以上引用終わり)-------------------

アボガドロの分子説がカニッツァーロによって再評価され広く認められるまで50年を要した例を挙げるまでもなく、最先端の研究者が周囲の無理解によって無視されたり虐げられたりして、なかなか評価されないのは、人類の歴史上、珍しくありません。ましてや、その偉業を化学に対して無知蒙昧な政治屋によって虚仮(コケ)にされるのは、古くはラボアジェギロチンから、近くは「二位ではダメですか」と科学予算を削減したお笑い芸人大臣など、枚挙にいとまがありませんね。

とにかく、イスラエル人化学者のノーベル賞受賞オメオメ━━━(ノ*´>ω<)ノ ━━━!!!!


タグ:準結晶
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